解題『制度と文化』第1回 企業文化論ブーム・再考


制度と文化―組織を動かす見えない力
日本経済新聞社
佐藤 郁哉

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1.組織文化論の隆盛
 組織文化論の隆盛というのは、1980年代、日本企業の躍進によって自動車など日本の製品が海外を席巻し始めた頃でした。「日本企業には何か秘密があるのか?」「それとも、日本企業が単に優れた企業の共通要素を備えているだけなのか」といった議論が海外でも盛んになったのでした。

 この「解題『制度と文化』」のコーナーでは、最近出た組織論の本の中では決定版ともいえる『制度と文化』という本を分かりやすく読み解きながら、すぐれた組織の在り方について考えていきたいと思います。

 その中で、マッキンゼーでコンサルタントを務めたトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンが著した『エクセレント・カンパニー』という本は、優れた企業の共通点を以下のように挙げています。

 1.行動の重視
 2.顧客への密着
 3.自主性と企業家精神
 4.人を通じての生産性の向上
 5.現場重視と価値観に基づく実践
 6.基軸から離れない
 7.単純な組織、小さな本社
 8.中央集権と権力分散の共存

  こういった組織文化論、企業文化論の功績は、数値データによる分析が主だった組織研究の手法に広がりをもたらしたといえるでしょう。

 4.企業文化論の問題点

しかし、の企業文化論に対しては以下のような問題も指摘されていました。

 ■文化の意味
 ⇒「企業文化」や「組織文化」とは一体何を指すのか

 ■文化と業績の因果関係
 ⇒強い文化は、いつでも高い業績や連帯をもたらすのか
 ⇒部署ごとの文化の違いなど、文化の強調による弊害はないのか

 ■模倣の功罪
 ⇒有力な同業他社の文化は模倣すべきか?それによる弊害はないのか?

 ■業界特有の文化と個々の企業文化の違いをどうとらえるか

 ■文化の中身
 ⇒文化というときは、価値や信念が大事ということなのか?

 ■文化の意図的な操作の可能性
 ⇒文化というのは管理者の意図通りに作れるものなのか

 ■文化的変革の容易さ
 ⇒文化というのは容易に変えられるのか

 ■価値の共有の意義
 ⇒皆が一つの文化を信奉するのは本当に望ましいのか


 (続く)





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